愛の巴投げ無節操で無責任な映画レビュー

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仁義なき戦い 広島死闘篇 20:21
評価:
Amazonおすすめ度:
シリーズ最高作でしょう
山中と大友
成田三樹夫につきる
1973年
監督:深作欣二
脚本:笠原和夫
出演:菅原文太、北大路欣也、千葉真一、梶芽衣子、名和宏、成田三樹夫、山城新伍、前田吟、木村俊恵、加藤嘉、室田日出男、川谷拓三、八名信夫、小松方正、志賀勝

シリーズ第2弾である本作。北大路欣也と梶芽衣子のロミオ&ジュリエット的悲恋に怪物・千葉ちゃんが絡んでてんやわんやといった様相を呈しており、前作の主人公・文太兄の露出は控えめ。この破壊へと突き進む物語にはアメリカン・ニュー・シネマのニオイ、影響を嗅ぎ取るべきでしょうか。確かに成田三樹夫氏が渋い。こんな兄貴だったら命を預けたいものです。北大路さんに関しては個人的に『濡れた二人』の脂っこさに仰天したので、本作の山中はまだあっさりとした印象に留まります。あと、千葉ちゃんの台詞は字幕が必要なくらい何言ってんだかさっぱりわからない。

そもそも本シリーズにおけるいわく言いがたい不気味さというのは、誤解を恐れずに言えば戦後間もない広島という舞台、すなわち原爆の爪痕生々しいその凄惨な雰囲気が醸し出す不気味さであり、その地で繰り広げられる血の抗争はどうしたってヤクザ同士の“センソウ”ではなく、“戦争”にならざるを得ない。戦争に行きそびれた山中(北大路欣也)と大友(千葉真一)演じる二人の男はその鬱屈を渡世にぶつける以外手段がなかった。愚かではあろうが、故に山中の末路は涙を誘う。
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ファム・ファタール 23:24
評価:
Amazonおすすめ度:
FEMME FATALE
解りにくくエグい
デパルマがやりたいようにやった映画
2002年
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ
出演:レベッカ・ローミン・ステイモス、アントニオ・バンデラス、ピーター・コヨーテ、エリック・エブアニー、エドゥアール・モントゥート、ティエリー・フレモン、グレッグ・ヘンリー、リー・ラスムッセン、フィオナ・カーソン

そのキャリアから大監督と呼んでも差し支えないブライアン・デ・パルマ。そんな彼がこのような、誰が観ても破綻した物語と対峙する姿勢、まるで初めてカメラを手にした映画好きの少年のようなその姿勢に涙がとまらない。純粋だ、どこまでもデ・パルマは純粋だ。

ファム・ファタルとは、すなわち悪女。悪女と言えばフィルム・ノワール。フィルム・ノワールに犯罪は不可欠。男と女、サスペンスとミステリ。ってかミステリじゃねぇし。でもいいじゃない、デ・パルマなんだから。それが“映画”だ、とでも言わんばかりの本作はまさしく映画の喜びに満ちている。そのセンスはかなり古いと言わざるを得ないけど……。でもいいじゃない、デ・パルマなんだから。デ・パルマなんだから。『スネーク・アイズ』だって好きなんだから。

強いて言えば、主演したレベッカ・ローミン・ステイモスのスタイルはいいけど、お顔がどうにも女装したブラピにしか見えなかったのが難点でしょうか。トホホだった東野圭吾氏原作のテレビドラマ『白夜行』、是非デ・パルマ先生の手で『ファム・ファタール2』としてリメイクしていだきたい。
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太陽 21:18
評価:
Amazonおすすめ度:
期待した映画
鎖骨に「ポテ」がいいよね
声が…
2006年
監督:アレクサンドル・ソクーロフ
脚本:ユーリー・アラボフ
出演:イッセー尾形、ロバート・ドーソン、桃井かおり、佐野史郎、つじしんめい、田村泰二郎、ゲオルギイ・ピツケラウリ、守田比呂也、西沢利明、六平直政

尋常ならざるこの退屈さにはただただ驚嘆するばかりですが、昭和天皇の人物像、実像に迫るということ“だけ”を目的としているのであれば、それなりに成功しているのではないでしょうか。が、一体それがなんだというのか。それこそヒトラーだって人間味はあったでしょうに。ただ、少なくともロシア人が描く日本人像としては、俳優陣の奮闘もあって違和感なく観てはいられます。ファンタジックな空爆シーンも白眉。

しかしそれらだけをもって本作を評価しろというのは、些か虫がよすぎるのではないでしょうか。終戦間近から直後あたりまでの壮絶な時期を描いているにも関わらず、それについて正面から対峙、言及されることはほとんどなく、お茶目な一面も持っていた異国の哀れな王様、そうした外国人にも与し易い“皇帝”のイメージがイッセー尾形氏の名人芸の助けを借りて提示される。ドラマティックな抑揚は“過剰”なまでに制限され、図らずもラストの桃井かおり演じる皇后の鋭い眼光ばかりが目に焼きつく。

現人神の解釈をめぐり「人間宣言」を経て肩の重荷を降ろすことで少しだけ救われたように描かれる本作の天皇もどき、いや、万世一系という世界的にも稀有な天皇制というシステムそのものが異国の目には理解の範疇を超えているのだろうと推察すべきなのでしょうか。やはりこのテーマはいずれ日本人自身の手で再構築されねばならない。辛うじてその際の一資料としての価値はあったかと。
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16ブロック 00:23
評価:
Amazonおすすめ度:
クライム・サスペンスの傑作
ブルースが渋い
はじめてのブルース
2006年
監督:リチャード・ドナー
脚本:リチャード・ウェンク
出演:ブルース・ウィリス、モス・デフ、デビッド・モース、ジェナ・スターン、ケイシー・サンダー、キルク・カザート、デヴィッド・ザヤス

酷評されることもなければ大絶賛されることもないであろう、良く言えば小奇麗にまとまった、厭味っぽく言えば冒険のない佳作、といった印象。目と鼻の距離を護送するだけというネタ的な舞台装置に配置された、堕落した白人刑事(ブルース・ウィリス)と紋切り型の黒人軽犯罪者(モス・デフ)というバディ、さらにはそこに出てきただけで悪役確定のデビッド・モース演じる元バディが絡む。言うなれば三角バディムービー。

舞台設定から密室劇じみた頭脳戦、心理戦を期待するも、バスでの篭城がわずかにあった程度で行動は基本的に行き当たりばったり。アクションも控えめで、物語の比重は男たちの心情、主にウィリスの葛藤にスライドしていく。嫌いではないが、積極的に支持したくなるようなものでもない。ただ、ウィリスの役作りには敬意を表すべきかも。
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シッコ 18:14
2007年
監督/脚本:マイケル・ムーア

まあ、ムーア監督ですから結論ありきのプロパガンダであることは先刻承知ですが、それでも尚、興味深く観ることができました。日本の現状が他人事ではなくなりつつあるということが非常に恐ろしい。幸い私自身は持病もなく、大病も患ったことがありませんが、いつ事故に遭って指を失ったりするかも分からないわけで、そんな時、経済的な理由で中指をくっつけるか薬指をくっつけるか、究極の二者択一を迫られたら、と想像するだけで背筋が寒くなります。不条理もこれだけ度を越すと滑稽に映るんですよね。事実、後ろの席に座っていたオバサマはクスクスと笑い声を漏らしていらっしゃいました。

薬代を捻出するために80近い老人がスーパーで清掃の仕事を死ぬまで続けねばらないと嘆き、一組の老夫婦は莫大な治療代のせいでマイホームを売り払い、それでも賄いきれず破産する。ある者は高額な医療費を惜しんで自ら針をとって傷口を縫い、またある者は自動車事故によって救急車で搬送されるものの、事前申請がなかったからという理由で保険が適用されない。民間の保険会社に雇用されている医師は治療の依頼を断れば断るほど儲かる仕組みなのだそうです。

繰り返しますが、ムーア監督の製作手法は問題点の指摘とそれを徹底的に、敢えて盲目的に揶揄する、いわば著しくバランスを欠いた演出ですから、すべてを鵜呑みにするわけにはいきませんが、それでも利潤追求を最大の目的とした民間保険会社、翻ってそこに丸投げする米国政府の食い物にされている“被害者たち”の姿はホンモノであろうと思われる。発言力を持っている方にこそ本作を観ていただきたい。って言うか安部総理、『ALWAYS続・三丁目の夕日』より『シッコ』を観てください。日本国内でもムーア監督の仕掛けた爆弾がより大きな効果を伴って炸裂してくることを願ってやみません。小泉・竹中路線を選択した日本の未来像がここにあるとすれば、「絶望」の二文字が頭をよぎります。コムスン問題など氷山の一角であり、また序章に過ぎないのかもしれません。期せずして本日、内閣改造が発表されましたが、果たして日本の行方やいかに。
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キル・ビル Vol.1 22:38
評価:
Amazonおすすめ度:
どうりで、TVのロードショーで放送されないわけだ!!
チープで悪趣味爆発の傑作映画
おもしろすぎて、突き抜けてしまいました
2003年
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマン、デヴィッド・キャラダイン、ルーシー・リュー、ダリル・ハンナ、ヴィヴィカ・A・フォックス、マイケル・マドセン、サニー千葉、栗山千明、ジュリー・ドレフュス、ゴードン・リュー、國村隼、北村一輝、麿赤児、ラリー・ビショップ、前田愛、大葉健二

碌なスポンサーもつかないまま90分程度に圧縮され、深夜にこっそりテレビ放映されていた『キル・ビル』を数年ぶりに観て、タランティーノ監督が抱える資質と志向が一部乖離しているという問題を再考してみる。それは良しにつけ悪しきにつけ、ラノベ作家体質であるということ。いや、ラノベをどうこう言うつもりはないんです。今や無視できない一大市場であることは認識していますし、その中から注目すべき作品が多々生まれていることも把握してはいます。けれども、東浩紀氏の言葉を借りれば、大半の作品がいわば類型化された記号の組み合わせ、すなわちデータベース消費から成り立つ“いわゆる”ラノベ的作品においても、例えば“涼宮ハルヒ・シリーズ”のようなオリジナルのフック(って言いながら観たことないんで実際は知りませんけどね、でもこれほど多くの人を魅了しているということはまあそういうことなんでしょう)がなければ淘汰されるに決まっている。

さて、では『キル・ビル』はどうか。やはり全編に渡ってパッチワークとの印象は拭えないし、吹替版だったのであの拙い日本語の違和感は軽減されてはいたものの、どうしたって押し付けがましい趣味の羅列には閉口させられる。そもそもB級というのは本来積極的に志向すべきものではなく、背伸びしたにも関わらずA級に手が届かないその稚拙さが、かえっていじらしく、何故だか愛すべき存在として歴史の狭間に埋もれていくべきものであり、『ジャッキー・ブラウン』のような上質な犯罪映画を作れる人が敢えて貴重な時間を割いてまで取り組むべきようなものではない。

そもそもB級映画としたってあまり出来のいいものではなく、わずかに最初のターゲット(娘を持つ黒人女性)とのバトル、それから病院からの脱出劇に見るべき部分があった程度で、千葉ちゃんが絡むシーンなどはおしなべて退屈。で、最初に述べたようにタランティーノ監督がラノベ作家的だということに話を戻すと、それはキャラクター造型の巧みさに顕著であり、例えばトラボルタやパム・グリアを前線復帰させたのはその証左でしょうし、本作でもルーシー・リューが魅力的な悪役として描かれている。またそのキャラクター造型こそがラノベの肝であるわけですから、これはもう今更言うまでもなく疑いようがない。近日公開予定の『デス・プルーフ』もある意味懐古趣味の延長なんでしょうが、本作のような度を越した悪ノリでないことを祈るほかありません。
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春夏秋冬そして春 00:21
評価:
Amazonおすすめ度:
素朴なのか、残虐なのか、それともこれが自然なのか。
貴重な親日国も大切に
主役は自然。
2003年
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
出演:オ・ヨンス、キム・ギドク、キム・ヨンミン、ソ・ジェギョン、ハ・ヨジン、パク・チア、キム・ジョンホ、キム・ジョンヨン

時系列は前後しますが舞台装置の似ている『弓』よりは良かったかな、と。しかしやっぱり愚直なまでにストレートなんですね、この方は。そこは奇を衒わないという部分を評価すべきなんでしょうか。ロケーションは確かに絶景で、この景色を眺めているだけも心が洗われます。

ただ、やはりどこか大味と言いますか、大事な部分がすっぽ抜けている気がしてならない。なるほど一人の男の人生と四季折々をオーバーラップさせて静謐に描写されていく様はそれなりに説得力を有している。けれども、設定上同一である筈の主人公を、少年時代はまだしも、3度にもわたって完全なる“別人”が演じ分けるというのはいかがなものでしょうか。元パチンコ必勝ガイド編集長、大崎一万発氏のような青年が俗世にまみれると、いかにも韓流といった風貌のハードボイルドに一変してしまう。同一人物であると観客が悟ることは容易ではあるのですが、成人男性の顔(顔つきという意味ではなく)が変わるということは、大袈裟に言えばそれまでの蓄積を崩壊することにも繋がっていかないだろうか、と。そしてそれは物語そのものの断絶をも意味し、100分程度で人間の業を描く本作においては由々しき問題なのではあるまいか。

言葉を排除して丁寧に物語を紡いできたのに、「あ、そこはアバウトなんだ」という驚きを禁じえませんでした。ギドク監督自身が演じる壮年期の男の登場では「誰?」という疑問が体に石を結びつけるまで氷解せず、突然カンフーに開眼するエピソードに至っては、跳び蹴りをしてストップモーションという無防備なセンスに愕然とした次第。

それ以外にも冒頭“春”のエピソードで少年が無益な殺生を繰り返すわけですが、ここが端的に本作のもたつきをあらわしています。つまり「生き物と石を紐で結ぶ」→「それを放ちもがき苦しむ様を見て笑う少年」、という描写が3度繰り返されるわけですが、2度目と3度目の「生き物と石を紐で結ぶ」描写は割愛できる筈なんです。にも関わらずギドク監督はそれをやる。「何を描くか」というビジョンは明確だと思うのですが、「何を削るか」という部分がおろそかに感じるんですね。

舞台が舞台ですから仏教、宗教が教示する道徳観、あるいは人生観に着地せざるをえないのは仕方が無いにせよ、欧米人が喜びそうな露骨なオリエンタル趣味の羅列は河瀬直美監督、あるいは辻仁成氏のようなあざとさを感じてしまい、まだ『サマリア』の方が可愛げがあったような。しかし結局、俗世と隔絶した神聖なる庵が結果的に「ろくでなし養成所」との印象に落ち着くのは宗教そのものの形骸化を告発しているのか、いないのか。
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天然コケッコー 01:20
2007年
監督:山下敦弘
脚本:渡辺あや
出演:夏帆、岡田将生、柳英里沙、藤村聖子、森下翔梧、本間るい、宮澤砂耶、田代忠雄、二宮弘子、井原幹雄、斉藤暁、廣末哲万、大内まり、夏川結衣、佐藤浩市

『ぼくのなつやすみ』っていう牧歌的なゲームがありますでしょう。アレですアレ。
非常に健全でいい映画なんですよ。文科省のご推薦があってもいいくらいに。ああ性善説ってこのことなんだなって思いますね。家族揃って観るには文句ナシ。100人中90人くらいの方はほっこりした気分に浸って帰路につけるでしょう。でもね、残念ながら私はその90人の中に入れなかった一人で、「こんなの嘘っぱちだぁ!『トランスフォーマー』の方がまだリアルな気がしてくるぜぇぇい!!」と泣き叫びながら真夜中の歩道橋を全力疾走で駆け抜けたい。そして甘い缶コーヒーを買って馬鹿な犬に吠えられながら(罵倒気味に)、トボトボ家に帰りたい。そうでもしなければ、このあまりにも清く美しいワンダフル・ワールドに押し潰され、いたたまれない絶望的な気分なのです。むしろ今は『悪魔の沼』のキチガイオヤジにでも追い回されていたほうがましです。

原作は漫画だそうですけど私は見たことも聞いたこともありませんね。けどまあ、映画になるくらいだから人気があるんでしょう。脚本は先日『トップランナー』にもご出演されていた渡辺あやさん、お綺麗な方でしたね。さらに監督は山下敦弘氏ということで売れっ子揃いぶみという磐石の布陣。

ともあれ、本作は主演の夏帆さんを観る映画といっても過言ではありません。これ以上大人びても幼すぎても駄目だったろうと思わせる“多感な少女”を見事に演じています。子供たちは皆そつのない演技を披露していたのですが、彼女と転校生のボーイフレンド(岡田将生)以外だと最年少のさっちゃんがおいしい役柄で目立っており、非常に微笑ましかった。PFF出身の廣末哲万氏もキモイ郵便局員役で出演していたり。山下監督お得意のオフ・ビートなギャグは控えめですが、それがかえって氏の安定した演出ぶりを際立たせていたようにも思います。まだ若手とは思えない落ち着きが感じられますね。

しかし同じように少年少女たちを描かせるとやはり岩井俊二監督って上手かったんだなぁって再認識しますね。昔はどうにも苦手でしたけど。子供たちの残酷な一面もきちんと見据えてるとこなんかは「そうだよなぁ」って妙に納得させられます。

それから『FM89.3MHz』の時も言いましたが、本作もやたらとブラック・アウトが多用されるんですが、これ流行ってるんですかね?『ストレンジャー・ザン・パラダイス』じゃないんだから、ただでさえ長い尺なのに余計ダラダラした印象を与えるのはどうかと思いました。いっそ思い切って30分くらい削ってもよかったのでは?
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悪魔の沼 23:33
評価:
Amazonおすすめ度:
佳作
"Heatless"、"Hopeless" and "Helpless"
悪魔のいけにえと比べてはいけない。
1977年
監督:トビー・フーパー
脚本:アルビン・L・ファスト、マルディ・ラスタム、キム・ヘンケル
出演:ネヴィル・ブランド、メル・フェラー、スチュアート・ホイットマン、マリリン・バーンズ、クリスティン・シンクレア、ウィリアム・フィンリー、カイル・リチャーズ、キャロリン・ジョーンズ、ロバート・イングランド

う〜ん……、残念ながらあんまり楽しめなかったですねぇ。
これを評価している方ってのはおそらくトビー・フーパーというネームバリューに対する敬意なんじゃないでしょうか。ただ、DVDの特典映像として収録されているテレビ放映時そのままの吹替え版を観ると俄然輝きを増すのは何故なんでしょう。B級ホラーと吹替えっていうのは物凄く相性が良いということを再確認出来ました。昼下がりの土曜日、無駄な悲鳴と無駄なオッパイを肴にひっくり返ってビールをあおりながら鑑賞するにはほどよい馬鹿馬鹿しさと後味ゼロの虚無感。『ミリオン・ダラー・ベイビー』なんて観たら塞ぎ込んじゃいますものね。

ちなみにお気に入りのシーンはこれ。
ネヴィル・ブランドが泣き叫ぶ少女をモーテルの床下に追い詰め、いよいよ死神のような鎌を振り下ろした際、なんと鎌が柵に当たってみすみす少女を取り逃がしてしまうというなんとも古典的なドジっ子ぶりが超キュート。
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FM89.3MHz 23:25
2007年
監督:仰木豊
脚本:イケタニマサオ
出演:小沢仁志、松浦祐也、浅川稚広、あじゃ、渋川清彦

ヤクザタクシー』(監督:黒沢清)なんてのもありましたが、異化効果を狙った任侠モノですね。一応、渋谷の劇場で2週間だけ公開されたようですが、いわゆるVシネです。

15年の刑期を終えた浦島太郎状態(ってそんなことあり得ないと思うのですが)のヤクザ準次(小沢仁志)は、借金のカタに押さえられた雑居ビルのミニFM局“FM89.3MHz”でシノギを命じられる。それも実家が電気屋だからという理由で。(しかもこの設定が生かされることは一度もない)有無を言わさぬ親分の命に従い、渋々歌舞伎町に足を運ぶ準次だったが、そこには萌え系インディーズアイドルゆかタン(浅川稚広)が孤軍奮闘していた。ゆかタンによれば、そのミニFM局は既に存亡の危機に瀕していると言う。気乗りのしない準次だったがある時、成り行き上DJを任される羽目に陥り……。

って感じの導入部なんですが、構造そのものは『ヤクザタクシー』なんかと同じですね。但しここに歌舞伎町と秋葉原という、同じ東京でありながら互いにベクトルの違うディープな文化摩擦が予測され、期待感は否応にも高まります。しかしこれが残念ながら拍子抜け。というのも、DJゆかタンは確かに萌え系の片鱗を覗かせるものの、オフのゆかタンは至って普通の女性なんです。ですから仁義を重んじるヤクザの化石、準次とも比較的まともなコミュニケーションが成立してしまっている。昼間はOL相手に700円の弁当とか売ってますし。せっかくオリジナルソングまで用意しているわけですから、やはりここは路上ライブとかでオタク相手にCD売りつけ、日銭を稼ぐ涙ぐましいインディーズアイドルとしてのあるべき姿が見たかった。

メイド喫茶で献身的に働くあの娘が実はネカフェ難民だった、みたいな余計なリアリティーが本作の持ち味であるコメディーとしての“軽さ”を霧散させているんですね。但し、そのリアル志向がいい結果を生んだ好例として、番組のスポンサーにファッションヘルスやカジノ、ポルノDVD店だのといったいかにも歌舞伎町の記号を持ち込んだのは評価すべきでしょう。

それにしても、ゆかタンの目的がよく判らないんですよね。本格的にアイドルとしてメジャーデビューしたいのか、あるいはミニFMという愛着ある場所を守っていくだけで満足なのか。まあ、おそらく後者なんでしょうが、だから余計にその“萌え”があくまでパフォーマンス、すなわちビジネスライクにしか映らず、中盤以降ではほとんど蔑ろにされる始末。きっと製作者陣営もホントは誰も興味がないし、特別なリサーチもされていなかったのでしょう。故に記号どまりの“萌え”に過ぎず、その必要性すら感じられないままの放置状態。

その代わりと言ってはなんですが、準次の娘(あじゃ←すごいお顔ですね、この方)の彼氏ナルシー(渋川清彦)が見事その期待に応えてくれました。ナルシーはいわゆるクラブDJなわけですが、フランクな口調(って言うかホリが真似するキムタク+ルー大柴風)や不遜な態度がいかにも軽薄ながら決して悪いヤツには映らない、そんな難しい役どころを渋川さんは好演していらしたと思います。全く違う価値観と文化を持つナルシーと準次の掛け合いがなかなか面白いんですよね。まるで『ウルルン滞在記』でも見ているような気分にさせられます。こうした化学反応がゆかタンとの間に起こらなかったのは非常に残念でなりません。

終盤のてんやわんやはお約束として、拳銃が一発しか発射されないヤクザ映画っていうのも珍しいですね。技術的なことで言えば、やたらとブラックアウトが多用されていて、物語のテンポを著しく乱していたのが気になりました。それからチョイ役で山本浩司さんが顔を覗かせているのもなかなか興味深い。なにより小沢仁志さんが唄う「新宿夢鴉」は一聴の価値アリ。完コピしてスナックで披露すれば絶対モテます。
絶対モテます。



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