愛の巴投げ無節操で無責任な映画レビュー

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ヤクザタクシー 893TAXI 15:30
1994年
監督・黒沢清
脚本・釜田千秋/黒沢清
出演・豊原功補、森崎めぐみ、大森嘉之、寺島進、諏訪太郎

個人的に黒沢清監督については、この前後から『蛇の道』『蜘蛛の瞳』あたりまでの量産作家時代に強い愛着があります。以降、いわゆるJホラーの雄としての力量に疑いの余地はないまでも、その剥き出しな“作家性”とは裏腹に監督自身がしばしば言及されるトビー・フーパーやジョン・カーペンターのような娯楽映画群から徐々に迂回してしまっているというその言行不一致な態度に、世界でもトップクラスの才能であるが故にやきもきさせらる存在としてこれまで意識的に距離を置いてきました。

『LOFT』が映画の求道者、あるいは指導者宣言であったと解釈するなら、やはり黒沢監督は映画について少し知りすぎてしまったのではないでしょうか。そうであるからこそ身動きがとりずらくなり、業界の評判と反比例するかのように製作ペースも徐々に落ち込み、観客と正対することを極力避けているようにも感じられる。

もっと言えば国内外を問わず、批評家や一部のシネフィルだけをターゲットにしているのではないかというあざとさ、したたかさへの疑惑や、映画史に名を連ねる準備(って絶対に残ると思いますけど)を着々と進めているのではないかと意地悪な勘繰りをしてみたくもなります。

それに比べて本作の肩の力の抜け具合はどうでしょう。Vシネマという抑圧と自由度のバランスが巧妙に黒沢監督の魅力を引き出しています。自説を展開させてもらうなら、やはり作家性の強い監督はある程度の縛り、抑圧が必要なのだと再認識させられます。

解散したタクシー会社を再び誠二(豊原功補)が訪れ、加奈子(森崎めぐみ)と再会し押し問答するくだり。誠二が怒って破れたクッションを叩きつけると中の羽が一斉に舞い、それに反撥する加奈子が叫ぶと天井から錆びたチェーンがドサリと落ちてくる。このシーンがとりわけ素晴らしい。軽妙なスラップスティックとしても機能している草原でのクライマックスもまた言うに及ばず、いずれも黒沢的としか言いようのない特徴的な演出を存分に堪能することが出来ます。助監督に名を連ねる青山真治氏にも思わずニヤリ。



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大地の子守歌 17:58
評価:
Amazonおすすめ度:
少女の直向きな生き様
1976年製作
監督・増村保造
脚本・白坂依志夫/増村保造
出演・原田美枝子、佐藤佑介、賀原夏子、田中絹代、岡田英次、梶芽衣子

舞台は昭和7年前後の四国、身寄りのないおぼこ娘が瀬戸内海に浮かぶ島の女郎屋へ売られていくという絵に描いたような不幸話。日に焼けた鼻っ柱の強いクソガキおりん(原田美枝子)が初潮を経て徐々に“オンナ”になっていく様が実に生々しい。それはまだ膨らみきらない乳房であったり、ふとした時の幼い表情であったり、それらが“オンナ”と共存する人生の中でただ一度きりの貴重な時期に撮影されたということが本作最大の魅力となっているのではないでしょうか。

増村作品に通底する“孤高のオンナ像”は健在ながら、それらを一手に引き受けてきた若尾文子さんとは違い、当時新人であった原田美枝子さんのそれはさらに不器用で、なればこそ痛々しく、そして愛くるしい。

おりんは言う。
「あたしは他人を敵か味方かはっきり分ける」
また、愚かにも「一人で好き勝手に、自由に生きてやる」
そうして周囲の善意も素直には受け入れられず、傷つき、殴られ、顔を腫らして「どうすればいいんじゃ!」と亡き祖母に、大地に問う。
そして恐るべきことに土を喰うわけです。

まさしく泥臭い生き様、にも関わらず瑞々しい。
やはり増村監督の手腕もさることながら、原田美枝子という稀有な新人の存在が本作を見事に屹立させていると思われます。



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十九歳の地図 22:20
評価:
Amazonおすすめ度:
迫り来る狂気が・・・
1979年製作
監督/脚本・柳町光男
原作・中上健次
出演・本間優二、蟹江敬三、沖山秀子、原知佐子

偽善者!死ね!貧乏人!能無し!無教養!キ○ガイ!のしあがっちゃるけん!……。
このように、人は誰しも心に『十九歳の地図』を持っているものです(ねぇよ)。
それはともかく、頼りない記憶によれば、かつて柄谷行人氏は盟友・中上健次の死をもって近代文学は一つの終焉を迎えたのだという趣旨の発言をされていたと思います。

柳町光男×中上健次
この数奇な巡り合わせは劇映画デビューとなった柳町監督にとって、また我々にとっても最高に幸福なものとなりました。

まず原作のアイデアが圧倒的に面白い。一応説明しておきましょうか。
ストーリー
十九歳の吉岡まさるは、地方から上京してきてから新聞配達をしながら予備校に通っている。集金に行けば、どこの家からもうさん臭くみられ、嫌われ、その存在はほとんど無視されている。吉岡は密かに配達区域の地図をつくっている。Aの家は毎日犬が吠えてくる。×印ひとつ。Bの家は玄関先に生意気にも真っ赤な花が咲いた花鉢を置いてやがる。×印ふたつだ。それぞれの不満度を×印の数で表した後は、今度はそれぞれの家に片っ端からいやがらせのいたずら電話をかけていく。そして、彼の行動は次第にエスカレートしていき…。(amazon.co.jpより)

学生でもない、社会人でもない、いわゆるモラトリアムが生み出すルサンチマンの狂気が全てここに集約されていると言っても過言ではありません。いい歳こいておもいっきりシンパシーを感じてしまう自分は大丈夫なのでしょうか。きっと矢沢タオルが手元にあれば、天井に向かってぶん投げていたことでしょう。

人間、40年も50年も、いや、たかだか20年や30年でさえ、生きていれば後ろ暗いことの一つや二つは抱えるものでしょうし、誰もが人格者になれるわけではありません。この十九歳の青年とて理想と現実の自己矛盾、あるいは童貞というコンプレックスを抱えながらも歯を食いしばって生きている。しかしながら、潔癖であるが故にそれが許せない。やがてそのジレンマは他者への憎悪として噴出していくわけです。

今年三十路を迎える(本作でうだつのあがらない三十男を好演している蟹江敬三と重なる、またそのきちゃない枕が涙を誘う)おっさんは彼に教えてあげたい。
それでいいのだ、と。そんなものなんだ、と。
あるいは北方謙三先生ならきっとこうおっしゃられる筈です。
「馬鹿野郎!ごちゃごちゃ言ってねぇでソープへ行け!」と。
そしてそれはある意味非常に真理に近いのではないのか、とも思うわけです。

今度の参院選、劣勢を強いられるであろう与党には青少年犯罪の抑制効果を狙った「十九歳限定ソープ助成金制度」の導入を提案したいと思うのですが、いかがでしょうか。



| 映画 サ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
パンク侍、斬られて候 19:31
評価:
Amazonおすすめ度:
うそつき野郎を、滅ぼしたい
圧巻腹ふり党
さすがの切れ味
テリー伊藤氏や吉田豪氏が喜びそうなニュースが飛び込んできましたね。
布袋寅泰VS町田康。
まさにパンク侍を地で行く無頼派。すべからく男たちはこうあるべきでしょう。
世知辛いご時世にあって久々に心温まるニュースです。

筒井康隆以後、あるいは高橋源一郎以後のポストモダン文学のメシアの如く、90年代後半に颯爽と現れ、依然として文学界を牽引する小説家・町田康。本作は時代小説の“純文学化”を試み、またそれに手ごたえを得て、大傑作『告白』へと繋がっていく重要なターニングポイントとして位置付けられることと思われます。

随分前に読んだので細部まで記憶していないのが残念ではありますが、軽妙洒脱な文体(伊坂幸太郎氏のような野暮ったさとは明らかに一線を画す)は健在で、且つ著者としては珍しい三人称よる語り口も地に足が着いた巧者ぶりが発揮されており、その未だ底知れぬ文学モンスター加減に敬服した覚えがあります。

それにしてもあのユーモアセンスというのは何物にも代え難い魅力がありますね。関西人的ながさつさとある種の気品と自己愛が絶妙な塩梅で配置され、独特の可笑しさを毎度提供してくれます。文学界のみならず、映画界を見渡してもこうしたセンスの持ち主というのはちょっと見当たりません。私が不得手とするクドカン、堤幸彦、三木聡という三大コメディメーカーとは対極に位置するユーモアです。

布袋氏もまたそのトラブルメーカーぶりが清々しい。対YOSHIKI、対保坂戦は有耶無耶に終わっていますが、今回ばかりは災い転じて福と成すとばかりにステージ、あるいはリングの上で決着をつけて、ゆくゆくは最強ミュージシャン決定戦でもテリー伊藤氏に企画していただきたいと切に願います。
勿論、リポーターには浅草キッドを起用していただいて。



| 文学 | comments(0) | trackbacks(1) | posted by helmetbros -
怪奇大作戦 セカンドファイル 昭和幻燈小路 19:23
評価:
Amazonおすすめ度:
悲しくも美しい映像
演出・北浦嗣巳
脚本・実相寺昭雄、玉城悟
出演・西島秀俊、田中直樹、青山草太、美波、寺田農、岸部一徳

一時期流行った昭和30年代懐古モノ、円谷版といったところでしょうか。
その昭和を演出するあたりではエフェクトだけに頼らず、近年あまり見られなくなった照明による雰囲気作りの意図がひしひしと感じられ、極彩色にも似たその光がある種の怪しさを上手く形成しています。新しさは感じられませんが、堅実なその仕事ぶりは実相寺氏のアイデアを尊重しているようでもあり、感慨深いものがあります。

また、主人公である牧(西島秀俊)の父との思い出も描かれ、新シリーズの中継ぎとして含みを持たせるような展開となっています。肝心の怪奇現象はある老人の念が一つの街をまるごとタイムスリップさせてしまうというもの。まったく科学的でなく、またその分析も特におこなわれないところが本シリーズらしく、「これでいいのだ!」と、ねじり鉢巻でもしたくなります。



| 映画 カ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
ブラック・ライダー 01:25
評価:
Amazonおすすめ度:
大活劇
懐かしいです。
懐かしいです。
1986年製作
監督・ハーレー・コクリス
原案/脚本・ジョン・カーペンター
出演・トミー・リー・ジョーンズ、リンダ・ハミルトン、ロバート・ボーン

カーペンター先生の隙だらけでバカバカしいアイデアに、トミー・リー・ジョーンズとリンダ・ハミルトンという豪華なキャストを配しながらも、きっちりとB級魂を宿した本作。リンダ・ハミルトンなんて『ターミネーター』以後ですからね。しかもこんな映画のカラミでオッパイを晒しているのに、まったく性的興奮を刺激されないところが凄い。

アクションとチープなサスペンスとちょいエロ、映画などこの程度でいいのだ、という達観したカーペンターイズムをハーレー・コクリス監督が再構築しています。

ツッコミどころは随所に散見されますが、そういうものだと自身に強く言い聞かせる、あるいはあたりめでも齧りながら強かに酔っぱらえば気になりません。しかしながら、ビル間の綱渡りなんてそれなにりにハラハラさせられますし、それから……、それから……、それくらいでしょうか。

あとはまあ、高速自動車ブラックムーンの時代を感じさせる近未来感や、リンダ・ハミルトンの不快指数の高い髪型、皺だらけで当時から老け顔なトミー・リー・ジョーンズ、必然性を欠く和風趣味、等々にクスリとさせらりたり。能動的に楽しめる方なら本作に価値を見出せるのではないでしょうか。

ただ如何せん、アクション映画のくせに肝心のアクションがあまり面白くないというのは致命的かと。



| 映画 ハ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
ライフ・アクアティック 18:06
2005年製作
監督・ウェス・アンダーソン
脚本・ウェス・アンダーソン 、ノア・バームバック
出演・ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット

おそらく全く意識していないと思いますが、船内の断面舞台での段取り芝居なんかを観ていると益々グリーウェイを想起させますね。また、「んなわきゃねぇだろ!」と内心感じながらも、どうしてあんなに銃撃戦シーンが素敵なのでしょうか。

本作はアメリカのみならず、全世界を見渡しても異彩を放っていることに疑いの余地はありません。特にパッケージにもある潜水艦で深海を進むシーンの異様さがそれを端的に証明しています。意図的なB級テイストは高度なストップモーション・アニメの技術等に支えられ、本作のユニークさとして見事に昇華されている。

どいつもこいつも皆一様にすっとぼけたキャラクターながら、私が苦手とする三木聡氏のような匙加減知らずには陥っておらず、良い塩梅に落ち着いています。物語の骨子だけを抽出してみると、前作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』との共通点もいくつか散見されます。不甲斐ない父親(ビル・マーレイ)、息子(オーウェン・ウィルソン)との確執、妻(アンジェリカ・ヒューストン)との関係、妻の元夫(ジェフ・ゴールドブラム)やウィレム・デフォーをはじめとする乗組員たちもある意味家族と言えなくもない。すなわち家族の物語であることは明白なわけです。

しかしながら、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』がニューヨークのとある街角が舞台であったのに対し、本作は海洋探検家が主人公ということもあって大海原が舞台となっています。ですから物語もそれ相応に膨らみ、エンタテインメントとしての幅を有している。船の下腹部先端にある無意味な小スペースなんてジョン・カーペンターの『ダークスター』を思い出しました。

二度、三度の鑑賞に堪えうるという意味でもまたグリーナウェイを感じさせます。しかし定価¥1350ですか、手元に置いておいても損のない一本だと思いますよ。



| 映画 ラ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
ザ・ロイヤル・テネンバウムズ 00:33
評価:
Amazonおすすめ度:
好きなはずなのに
推薦します
奇妙な天才一家!
2001年製作
監督・ウェス・アンダーソン
脚本・ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウィルソン
出演・ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』なる書物が図書館で貸し出されるファーストショットが示すように、「本作は虚構を“虚構”として描きますよ」と、製作者側と観客の間で暗黙的に交わされるコンセンサスが改めて強調されています。ですからこんなことをされれば当然のようにこちらも身構えますわね。

そうしてバカ丁寧な断りを入れた上で、プロローグからこれでもかとテンポ良くぶっ飛んだ大嘘が並び立てられていく。しかし始めに“お断り”をされているのでこちらも黙って付き合います。

そうこうするうち、30分後には芸達者な役者陣を含め、その隙の無い“虚構”っぷりに舌を巻いておりました。決して下品にならないユーモア感覚にも好感が持てます。シンメトリカルな構図やどこか舞台劇じみた良い意味での段取りくささは、初期のピーター・グリーナウェイを彷彿(かなり部分的ですが)させます。しかもそれがコメディタッチなので表現は柔らかく、グリーナウェイほど観る人を選ばない親切設計。

群像劇ながら個性的なキャラ分けもきちんとなされていますし、それをヴィジュアル面でも一目瞭然となるよう配慮されています。痒いところに隅々まで手が行き届いているんですね。それになんと言っても悪役商会のジーン・ハックマンが悲哀たっぷりでカワイイ。

ベン・スティラーと二人の子役がラストに着る黒いジャージというトボケっぷりもナイス。さらっと観れてしまうのに油断のならない作品です。



| 映画 サ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
ダイ・ハード4.0 23:05
評価:
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さあ!映画館へ
アクション満載
秀逸のセリフも聞きのがしなく
監督・レン・ワイズマン
出演・ブルース・ウィリス、ジャスティン・ロング

いやぁ、腐ってもハリウッドですね。って腐ってるのか知りませんが。
こんな映画ハリウッドしか作れませんし、作ろうとも思いませんよ。困ったことに語るべきことが特にありません。脚本に直したら原稿用紙10枚くらいの内容を129分間アクションだけで引っ張っているわけですから、ただ口をあんぐり開けてスクリーンを凝視するのが正しい鑑賞スタイルでしょう。

しかしながら、例えばトレーラー対F35やトンネル内でのカーアクションなど、どれも最高レベルのアクションとVFXではあるのですが、予告で流れていた新作映画のインパクトが頭から離れず、今ひとつ素直に乗れなかったことを正直に告白します。
『トランスフォーマー』超観たい!コンボイっぽいのも登場してたし。

愚にもつかない崇高を装ったおバカ映画よりは他のメディアでは意味を成さないという意味に於いて、また見世物、興行でしかない映画の起源を考えるなら、非常に正しい作品と言えるのかもしれませんね。

それにしてもスターウォーズへの言及とカリスマデブハッカーの存在にあまり必然性を感じなかったのは気のせいでしょうか。



| 映画 タ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
清作の妻 00:31
評価:
Amazonおすすめ度:
泣いてしまう
パッション?
狂気か正気か
1965年製作
監督・増村保造
脚本・新藤兼人
出演・若尾文子、田村高廣

屈折した純愛暴走劇とでも言いましょうか、若尾文子さんが狂気にも似た女の情念を見事に体現しています。概ねどの増村作品でも魔性の女役ですから、この程度はお手の物なんでしょう。しかし貴重な女優さんですよね。芝居も出来て惜しみなく脱ぐ、しかも文句なしに美しい。

監督の演出にもやはり隙がありません。脚本はこちらも巨匠新藤兼人氏ですが、物語の根底に流れる増村監督のテーマはヨーロッパ的個人主義に貫かれています。留学したイタリアの地で相当感化されたのでしょう。本作などはまさにそれが顕著で、男女の立場が逆転した『ロミオとジュリエット』と言いますか、周囲の反対を押し切り、揶揄されながらも許されざる恋に突っ走るおカネ(若尾文子)と清作(田村高廣)の決断は、一昔前よりは薄れたとは言え、村社会に生きる日本人の観点からは少々理解し難いものがあります。

とは言え、あばずれだの尻軽だのと陰口を叩かれる村の嫌われ者、おカネも清作との事実婚で徐々に畑仕事を手伝ったり、義理の妹に着物を贈るなど、村へ溶け込もうとする努力を見せ始めます。しかし戦争(日露戦争)が二人を引き裂き、寒村に生きるラテン女、おカネのフラストレーションは一気に爆発し、常軌を逸した行動に……。このあたりの描写も非常にスマートです。

スモークによるフェード・イン、アウトなんて小洒落た演出も憎いですね。
冒頭5秒間ほどの3、4カットが黒沢清監督の『ドレミファ娘の血は騒ぐ』に酷似していたと思うのですが、気のせいでしょうか。と言うか正確には『ドレミファ娘ーー』の冒頭が『清作の妻』に似ていると言うべきかもしれませんが。どちらもエキセントリックな女性が主人公ですし、この二作品の関連性は研究の余地がありそうです。って、めんどくさいので私は御免ですが。



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