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評価:
Amazonおすすめ度:
若々しい光
トリアーオタクより
ポップで深刻な物語
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2005年
監督:トマス・ヴィンターベア
脚本:ラース・フォン・トリアー
出演:ジェイミー・ベル、ビル・プルマン、マイケル・アンガラノ、ダンソ・ゴードン、ノベラ・ネルソン、クリス・オーウェン、アリソン・ピル、マーク・ウェバー
ラース・フォン・トリアーが脚本を担当しているわけですが、お世辞にも出来がいいとは言えません。けれども、それを補って余りあるヴィンターベアの演出が冴えています。荒唐無稽なお話ですから、(だって100mくらいの距離にコーヒーを届けるために命賭けるんですもの)このくらい遊び心溢れる演出が深刻さと滑稽さを中和させて絶妙だったんでしょうね。
一言で言うと、レトロな拳銃に魅了され、それを信仰の対象とする“負け犬”青年たちの一風変わった物語です。そのことから無論、銃社会(=アメリカ)への警鐘云々という側面もあるのでしょうが、別の観方をしていった方がより合点のいく描写が多々あることに気づかされます。あるコミュニティーの外側で生きるマイノリティーたちが絶対的な武器を手にすることによって“自信”を得、饒舌になり、強くなったと錯覚する。すなわちこれ、核兵器の問題でしょう。主人公が綴る手紙の中で、それを使用したら世界が破滅するとまで言わせているんですから。
スティービーが頭に巻いていたターバン、兄弟が被っていた耳あて付きの帽子は成長著しいどこかの国を想起させますし、生き残った者の厳密な人種がなんであったのかも暗喩めいています。“裏切りの銃”を持つ保安官がセバスチャンを連れてディックの家を訪ねた際、露骨に肩の星条旗を見せていたのもそうですね。とまあ、深読みしてくださいと言わんばかりの寓話的なシナリオなんで、そこがあまり好きじゃないところ。
それでも尚気に入ったのは、最初に述べたようにヴィンターベアの演出が面白かったからに他ならず、いかにもセットめいた広場のつくりとダンディーズの正装は、西部劇がやりたかったのがありありと伝わってきますし、ラストの銃撃戦も真似したくなるサム・ペキンパーのそれとは対極に位置するかのような、一発一発を重んじた展開に感心することしきり。
地下の“神殿”でしか息をしなかった“彼ら”が「目覚めよ」の呪文と共に火を噴く瞬間は感動すら覚えます。しかしまあ、逆立ちしたって敵いませんよね、世界最大の核保有国アメリカ様には。折りしも今日(日付変わって昨日)は長崎の原爆記念日、考える燃料としてはなかなかの代物ではないでしょうか。欲を言えば、殺傷兵器としてよりも外交カード(=発言権)としての側面にもスポットを当ててほしかったところ。