愛の巴投げ無節操で無責任な映画レビュー

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紀子の食卓 02:29
評価:
Amazonおすすめ度:
過剰なパワー溢れる傑作
大人になること・成長・名前について(ネタバレ注意)
ここがヘンだよ日本人
園子温監督の『紀子の食卓』をDVD鑑賞。
本作は同監督の『自殺サークル』の続編、あるいは補完する位置付けがなされていますが、作品内での時系列は多少前後します。

園監督の作品には以前から苦手意識があって、それは『自殺サークル』で決定的なものとなり、『奇妙なサーカス』でもそれは覆らず、自然、本作もずっと敬遠してきたわけです。

観賞後、ネット上での寸評を適当に見て廻ったのですが、概ね好意的な意見が多数を占めていました。確か宮台真司さんあたりがかなり持ち上げていたと記憶しています。

で、結局私の意見はどうなのかと言えば、辛うじて終盤30分間のみ、面白く観た、というかなり消極的な評価に留まります。そもそも私の園監督に対する苦手意識というのは監督の出自が詩人である、ということに由来すると自己分析するのですが、例えば紀子(吹石一恵)がクミコ(つぐみ)に連れられ住宅街を歩きながら、そこで目にする猫たちがまるで町の中で脈打つ動脈のようだ、なんてモノローグが差し挟まれるシーンに代表される、いわゆる“ブンガク的”表現や言い回しが鼻につくと言いますか、有り体に言えばダサく感じられるんですね。

そんな園子温的美意識に基づくモノローグが前半、怒濤のように押し寄せる。とにかくこれでもかと言わんばかりの饒舌さです。ではそういったモノローグという手法が邪魔なのかと言えばさにあらず、『パビリオン山椒魚』を監督された冨永昌敬さんの自主製作映画で『亀虫』という作品があるのですが、『亀虫』で多用されるこれまた饒舌な“ブンガク的”モノローグというのは厭味がなく、むしろ心地良いとさえ感じられる。

それではこの差は一体何なのか。一言でいってしまえばセンスの差なんでしょうが、それを言っては元も子もないので、もう少し掘り下げてみましょう。

『亀虫』で冨永監督が用いる言葉、ここで言うモノローグにはどこか照れ臭ささや台詞そのもに対する不信感が根底にあると思うのです。あるいは言葉との距離感と言い換えてもいいのですが、それってすごく重要なことで、至極真っ当な態度だと思うんですよね。ところが園監督の場合、言葉に対する信頼度がハンパねぇ、といきおいZEEBRA口調になってしまうほど。

それでも言葉を完全に統率出来ていれば一つの名人芸と成り得るのですが、コラージュされた言葉たちが意味を紡ぐ前に瓦解してまっている印象が毎度拭えないのです。悪い言い方をすると、それ言いたいだけだろ、みたいな。

詩とはギリギリまで削ぎ落とされた言葉の集積が放つ美しさである、という私の認識からすれば、園監督が提示する言葉たちの群れは、詩にも文学にもなりきれないフリークスのようにしか映らないのです。小説で言えば川上弘美さんの作品なんて必要最小限の言葉なのに美しいですよね。

どうやら『自殺サークル』でも頻繁に登場する
あなたはあなたの関係者ですか?
という問いかけがひどくお気に入りの様子ですが、キャッチコピーとしては名文かもしれないけれど、使用頻度が増す度にチープな言葉遊びにしか聞こえないのは私だけでしょうか。

ストーリーにしてもそうです。高尚なテーマを扱っているつもりなのかそうでないのかは監督自身に聞かなければ判りませんが、ともすれば青臭いだけとなってしまうリスクは常につきまとうわけで、本作がそれを回避出来ているかと言えば、私は非常に怪しいと感じました。

あれほどまで悲惨な目に合う様な落ち度が、父親(光石研)にあったでしょうか。私には良い父親の部類に入るキャラクターにしか映らなかったので、何故あのような境遇に陥ってしまうのか全く理解出来ません。むしろ“ココデハナイドコカ”“ホンライアルベキアタシ”“ソメイヨシノキミハ”みたいな寝言をほざく娘たちにこそもっと試練を与えてやるべきです。家出する前に頬を2、3発張ってやれば済む話でしょう。

これが例えば不条理コントであればここまでの嫌悪感は抱かないのでしょうが、喫茶店で父親に滔々と語る男のように、無表情でシリアスに迫ってくる本作はどうやら悪趣味な喜劇でもないらしい。

退屈な日常を否定し、虚構の中で構築された日常にこそリアルがある、とでも言わんばかりの論調には、例えそれがフィクションであったとしても否定さぜるを得ない。退屈で代わり映えのしない日々こそ大多数の人間が生きる日常であり、リアルなのですから。だったらせめて『マトリックス』のような大掛かりな嘘をついて欲しいというのが私の願いです。

最後に良かった点も述べておきましょう。
ラストチャプターから物語は俄然勢いを増します。それが結実されるのは、なんと言っても父親がガスボンベを探し、擬似一家がキッチンに集うくだり、妹のミカ(吉高由里子)が嗚咽を漏らしながら時間延長を訴える演技にはしびれました。

そう言えば以前、三木聡監督が苦手だって書きましたが、この二人が絡む『時効警察』が観ていられないのは私にとって自明の理というものですね。

気分を害された園子温ファンの方、申し訳ありません。
嘘をつけないたちなので、他の映画ブログを覗いて溜飲を下げてください。
| 映画 ナ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
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