愛の巴投げ無節操で無責任な映画レビュー

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ナイロビの蜂 22:37
評価:
Amazonおすすめ度:
愛の強さ
政治サスペンスと永遠の愛を語るラブストーリイが見事に融合
素晴らしい構成で、みせてくれます
『シティ・オブ・ゴッド』を撮ったテレビ業界出身のフェルナンド・メイレレス監督の劇場用映画第2作目。日本での公開は2006年ですね。主演はレイフ・ファインズ、その妻役を演じたレイチェル・ワイズは本作でアカデミー最優秀助演女優賞を受賞しています。

要するに個人VS国家規模の巨大利権構造みたいなお話ですよね。
ジョン・ル・カレの小説が原作だそうです。

日本国内でもミドリ十字(現:三菱ウェルファーマ)の薬害エイズや最近だとタミフルなんかの問題がありましたし、ライブドア事件に絡んだ野口氏の変死や松岡元農林水産大臣の自殺など、利権がらみの(と推測される)事故や事件は現在進行形で起きているわけでして……。

しかし厄介な奥さんですよねぇ、怖いもの知らずと言うか猪突猛進タイプ、これはもう“博愛原理主義者”と呼んでも差し支えないかと。それを印象付けるエピソードはなかなか秀逸です。

まず冒頭近くの講演会で場の空気を読まずに、アメリカのイラク戦争に追従した政府の姿勢を問い質し、一外交官でしかないジャスティンに対して説明責任を求める。ここでテッサのキャラクターが明確に提示されるわけです。

滞在先のナイロビでは、40キロも歩かなければならない地元の少年を車で送っていけと、反対する夫に食い下がる。夫が反対する理由は砂漠をコップの水で湿らせるように不毛な行為だというもので、それでも妻は目の前の乾きを癒すことだけは出来ると反論する。
どちらにも一理あるわけですが、これも夫婦の立ち位置を象徴するよく出来たエピソードだと感心させられます。

それ以外にもメイレレス監督のスマートな演出が随所に散見されます。
例えば結婚前、ジャスティンがナイロビに派遣されると知ってテッサは同行を申し出るのですが、YESorNOを迫られてもジャスティンは口籠って答えない。
すると次の場面転換ではナイロビに移り、村を視察するテッサの姿が映される。しかも腹が大きく突き出ている。そこで観客は二人の結婚と既に妊娠までしていること、すなわちある程度の時間経過が視覚的に読み取れる。
この“視覚的”というのが肝ですね。
「ねえ、あなた……」
「ん、どうした?」
「出来たみたい……赤ちゃん」
「なにぃ!本当か!でかしたぞこの野郎!」
みたいな会話は必要ないわけです。無論、結婚式も。

その二人の子供が死産を迎える場面もまた印象的です。大部屋の病室のベッドで何故かテッサは浮かない顔で黒人の赤子に乳を飲ませている。ジャスティンもテッサも白人ですから、黒人の赤子が生まれる筈などない。つまり死産したものの乳だけは出るので、12歳で赤子を生んだ母親の代理を務めているという痛ましい演出なわけです。

『シティ・オブ・ゴッド』はリオデジャネイロの貧民街が舞台でしたが、本作でも発展途上国の悲惨さを描いているという意味では監督の動機に共通したものが窺えますね。地獄の釜の蓋を妻が開け、そこに手を突っ込んだ夫、一応二人は一矢報いるのですが、結末はあまりにも儚い。

本当に恐ろしいのは、一人の悪の親玉が存在するという単純明快な構造ではなく、責任の所在が漠然としていてはっきり見えてこないという現実ですね。市場原理が抱える空恐ろしさの一端を垣間見ることが出来るのではないでしょうか。
(って毒にも薬にもならない女性週刊誌の映画紹介みたいですね)

歯切れの悪いことしか言えないのは、決して悪い映画ではないんですけど、悲惨過ぎて気が滅入っちゃうんですよねぇ。個人って無力だなぁ、と。ともかく問題提起として前面に押し出しつつも、エンタメのオブラートに包まれているのでうまく機能している部類なのではないでしょうか。

本作とか『ミリオンダラー・ベイビー』を劇場で観たカップルはどんな顔して帰ったんでしょうかねぇ。汗を握ったベトベトの手で彼女の手を引き、「そんなことよりさぁ、メガマックでも食べない?」と呟いた男性は100%軽蔑されたでしょうね。
連れ合いがテッサのような熱い正義感をお持ちの方は言動を慎みましょう。
| 映画 ナ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
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