|
評価:
|
監督:ポール・グリーングラス
脚本:トニー・ギルロイ、スコット・Z・バーンズ、ジョージ・ノルフィ
原作:ロバート・ラドラム
出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、デヴィッド・ストラザーン、スコット・グレン、パディ・コンシダイン、アルバート・フィニー、ジョーン・アレン、ジョーイ・アンサー、エドガー・ラミレス
どうなんでしょうねぇ、全編通してほぼノンストップ・ハイテンションなわけですが。確かに前半の新聞記者が駅で追い詰められていくシーンなんかはグリーングラス節が炸裂していて迫力満点だし、その顛末もまたリアリティがあって面白いと思ったのは事実。では何が引っ掛かるのかと言うと、それはポール・グリーングラス監督の前二作『ボーン・スプレマシー』、『ユナイテッド93』でも強く感じたように、印象的な画がほぼ皆無であるということ。すなわち、ボーン・シリーズのような荒唐無稽なお話でも、さらには『ユナイテッド93』のように極限までリアリティーを追求した場合でも、まるでテレビの報道カメラのごとき切り取り方によってある程度の水準をクリアすること、物語=フィクションを構築することが可能である、とポール・グリーングラス監督は確信を得たのに違いないわけで。
なるほど確かにその甲斐あって先述した駅での攻防や、ハリウッド映画においては白眉とも言える格闘シーン(まあでも、この手の撮り方なら深作欣二監督がいますからねぇ)、カーチェイスなど目を見張る描写は冴えている。しかしながら、少なくとも私には本作を観終えた後、胸の奥に沈殿し、反芻するような“画”は残らなかった。翻ってそれが映画の良し悪しを決定づける問題なのかと言えば口篭もってしまうのも正直なところではあるのですが、個人的にはやはり寂しい気もするのです。せめてあの手法がアクションに限定されたものであれば、また印象も変わってきたのでしょうが。とは言え、けっしてつまらない映画というわけではないのですが、もう一度観たいという気には残念ながらなりませんでした。