愛の巴投げ無節操で無責任な映画レビュー

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Monja 21:47
皆さんはご存知でしたか?
参議院議員、大仁田厚さんが原作、監督、主演を務める映画が存在することを。その名も『Monja』。私はレンタルDVD店でこのジャケットを目にした瞬間、すわ『シベリア超特急』の再来かと、武者震いを禁じ得ませんでした。何からいじっていいのやら対処に困るのですが、まず着目すべきはその破戒的キャッチコピーでしょう。

“昔、ロックスター 今、ろくでなし みんなまとめて もんじゃ焼き”

なんのことだ、と。お前は何を言っているんだ、と。
このコピーを読んだ誰しもがそう感じることでしょう。
まだまだですよ。こんなのは序の口です。

『Monja』公式HP(あるんです!)へ行くと、夕日に染まる高層ビルを背景に、互いの背中にもたれ合うライダースジャケット姿の大仁田さんと本作のヒロイン、原田紗世子さんがこちらをガン見してきます。そこにあるストーリー紹介のテキスト内容も素敵なんですが、それ以上にキャスト紹介のページに度肝を抜かれますよね。なんとあの古賀誠先生が友情出演!やはり自民党繋がりで断りきれなかったのでしょうか。さらには朝丘雪路さんの名前まで。しかしながら問題は表記上の主要キャスト5人の内、3人が友情出演という不可解さです。素晴らしい友情パワーですよね。

さて、それではいよいよ本編の内容に触れて参りましょう。
ファーストカットは薄暗い部屋にぽつんとある小さなラジオ。そこから聞こえるDJのトーク。かつて音楽業界を席巻した(というある種ファンタジックな設定の)マサ(大仁田厚)の曲がリクエストされる。
「いやぁ懐かしいですねぇ。マサ&ブルースカイかぁ」
そんな噴飯モノのグループ名をさらっと言うDJに、観る者は冒頭からまさかの有刺鉄線デスマッチを強いられたことを知るわけです。ちなみに製作されたのは80年代じゃありませんよ、2005年です。この世知辛い御時世、なかなか出来る発想じゃありませんよね。
内山田ひろしとクールファイブ、カルロス・トシキ&オメガトライブの再来でしょうか。進むも地獄、退くも地獄、もう後戻りは出来ません。

そんなファーストシーンは画面全体が青味がかっていて、キタノブルーならぬオオニタブルーに我々も負けじとブルー。暗く狭苦しい部屋の中でマサはむっくりと起き上がり、煙草を一服。ほんの少し『傷だらけの天使』を彷彿させる雰囲気に「おっ?そんなに悪くないかも」と淡い期待を抱かせます。

ところがどっこい、30秒後には我々の想像を遥かに越えた展開が待っている。ロック界から半ば追放されたマサは、現在はその腕力を活かしてヤミ金業者の下働き。何年経過しているのかは不明ですが、この落差ったらたまらない。それはともかく、今日も先輩3人と未納金の回収に多忙なようです。

相手は浪人生だか大学生だか判りませんが、頼りなさそうな青年。彼をよってたかって強面の先輩たちが脅します。「もうちょっと待ってください!」「貸りたもん返すのは当たり前だろうがっ!」みたいなステレオタイプのやり取りにブチギレたマサは、「うおおおおっっ!」と何の脈絡もなく雄叫びをあげて青年にショルダータックル!ところがそれはフェイク、まさしくプロレスであり、青年の財布から金を抜き取ったように見せかけて自身のポケットマネーで立替え、急場を凌ぐという離れ業を披露。

そのわりに立替えた金額は¥3,000という微妙なセコさに、先輩方も「なめんなよ!」とご立腹。とは言え、今日はこのくらいにしといてやる、とばかりに撤収していくご一行様。¥3,000回収するために大の男が4人がかりですからね、ヤミ金業者の人件費コストが心配です。

こんなパターンがあと2、3回繰り返されます……。いい加減マサの財布が心配になってきた頃、事態は急展開。一行は古めかしい駄菓子屋を切り盛りする母一人娘一人の借金取り立てに向かいます。そこのお母さんが勝ち気な方で、屈強な男達にも怯まない。ですから一悶着ありながらも、法外な利息を請求する一行を追い払うことに成功するわけです。

一行が去り際、店の棚から転落した商品をマサが拾い、娘さん(原田紗世子)に返してやるのですが、娘さん(役名を忘れたので以降は仮に花子とします)は大きな傷のあるマサの手に見覚えがある。ここでたっぷりと花子の回想シーンが挿入されます。またその回想が“ザ・回想”という趣で、ソフトフォーカスされた公園で一人遊ぶ幼き頃の花子、そこへいじめっ子の男子がやって来てやいのやいの言います。おやめなさいな、みたいな感じで止めに入った中学生時代のマサ、差し伸べられた手はまさに、今ここにある手と瓜二つ。
ちなみにこのザ・回想、本編の中で以降3回ほど使い回されます。

さて、あんなに元気だった駄菓子屋のお母さん、買い出しにスーパーへ行った帰り、原因不明の体調不良に襲われその場にうずくまってしまいます。そこへ偶然にも現れたのは我等がマサ!歌舞伎の合いの手みたく「よっ、ご都合主義!」などと言ってはいけません。マサには当然、救急車を呼ぶなんて発想はなく、有無を言わさずお母さんを背負って近くの病院へ駆けていきます。

そんなきっかけを経て、マサと花子はお近づきに。マサ行きつけのオカマバー『ファニーフェイス』で二人はささやかなディナーを楽しみます。もう逐一こんなところで立ち止まりたくはないのですが、そのディナーのメニューというのがまた常軌を逸していて、サンドイッチとオレンジジュースだったりするんです……。勘弁してくれ、と。んなわきゃねぇだろ、と思うのですが、奇才、大仁田監督はその手を緩めようとはしません。
そんな小学生の誕生日会でもガッカリレベルなディナーの席で、花子はマサに小さな熊の人形をプレゼントします。恋の予感ですね。まあ、これを読んでわざわざレンタルビデオ屋に走る酔狂な方も少ないでしょうから、今回も微に入り細に入り、完全ネタバレしてお伝えします。

花子と入院中の母親が経営する駄菓子屋は東京の下町、月島商店街にあり、その商店街の店舗や住人が皆、マサが所属するヤミ金業者から金を借りているというかなり無茶な設定なのです。一体その借りた金を何に使ったのかはさっぱり判らない。例えば店舗が改修されただとか、そんな様子は微塵も窺えません。

連日の乱暴な取り立て(完全な法律違反)に困り果てた商店街の面々は、それでも怖いから、という理由で泣く泣く返済していく選択をする。そんな不甲斐ない様子に憤慨した花子(自分だって他人事ではない)は、これではいけないと一人で発奮するのですが、その方法というのがまた頓珍漢で、「ヤミ金融業者に気をつけよう」との文面が書かれたビラを配る、というだけのもの。まるで建設的でない、と言うよりこれから金を必要としている人に対してならまだしも、業者に対しての抑止力となる筈などないわけです。そもそも「お前に言われんでも……」って話なんですが。

その一方、早々にヤミ金業者から足を洗ったマサは、花子の応援もあってかつての栄光を取り戻すべく、深夜の道路工事アルバイトで生計をたてながら、片っ端からレコード会社に頭を下げてまわる。ビラ配りをする花子もそうなんですが、この過程でマサも虫ケラのように扱われ、この非道っぷりがまた凄まじく、温かみのある笑いを提供してくれます。

ちなみに、朝丘雪路さんは結構出番があってお気の毒なのですが、商店街の面々の集会所と化している、もんじゃ焼き屋のおかみさんという役を演じておられます。このおかみさん、「ヤミ金業者を撃退するとっておきの秘策がある」と自信満々におっしゃるのですが、これはまだ秘密としておきましょう。これがまた凄いんです。

そんな自業自得的カラ廻りな日々の中で、マサはヤミ金業者にボコられたり、花子はオカマバーで知り合った自称業界関係者(マサにレコード会社を紹介してやると言って接近)に騙され、挙句土砂降りの雨の中に放り出されたりしながら、それでも我々には理解し難いアナザーワールドに向かってひた走ります。もう突っ込むのもしんどいので結構端折ってますけど、ここまででもかなりエキセントリックな描写の目白押しですからね。

例えば工事現場で働くマサは、他の作業員が皆、作業衣なのにも関わらず、一人だけランニングシャツにジーパンなんです。いやいや、ロックンローラーかもしれんけどそこは従えよ、って話ですよね。服で思い出しましたけど、設定は全編真夏っぽいんですが、マサは頑なに革ジャンなんですよね。ロック=ワル=革ジャンみたいな大筋で間違いではないんだけれど、ホントにそれやっちゃうんだ、という些かピントのずれたサプライズは自称小泉チルドレンの本懐でしょうか。

さて、ここまででなんとなくこの奇妙奇天烈な物語の骨格が理解いただけたでしょうか。要するにマサはロックスターとしての栄光を取り戻すことが出来るのか、また商店街とヤミ金業者の攻防の行方、という二本柱が本作の主軸となっているわけです。
ここで改めて気になるのがマサと花子の恋の行方なんですが、かなり散漫な物語なので、ぶっちゃけて言うと蔑ろにされています。と言うより、恐らく監督本人も忘れていたんじゃないでしょうか。

さあ、ここからはまさに急転直下の展開が待っています。
準備はよろしいですか?
それでは続けましょう。物語はここから大きく躍動します。そのキーパーソンとなるのはご本人役で出演されている古賀誠先生。いつものように花子と商店街の幾人かが、朝丘さんのもんじゃ焼き屋で善後策を検討していると、何の前触れもなく唐突に古賀先生が秘書らしき方と一緒に立ち寄ります。
そこでこれ幸いとばかりに顔見知りらしき朝丘さんが「古賀先生、こんな悪い業者がいるんですけど、なんとかなりませんか?」みたいな話を持ち掛ける。すると古賀先生、「ふむ。こりゃけしからん。私がなんとかしましょう」とトントン拍子で話はまとまり、古賀先生はそのまま店を後にする。

ね、おかしいとか言う次元じゃないでしょ?
古賀先生は一体何の用があって店に立ち寄ったのか?
朝丘さん演じるおかみさんの秘策とやらは、この偶発的な展開を指すのか?
疑問は湯水のように湧いてきますが、Monjaワールドでは愚問とばかりに一蹴されます。

で、その時点ではなんの進展すらないのにも関わらず、おかみさん号泣、商店街は盆と正月が同時にやってきたような大騒ぎ、さながらリオのカーニバルの如き様相を呈します。
マサと花子もカーニバルの先頭に立ち、デビッド・ボウイよろしくレッツ・ダンス。

あ、そうそう、この『Monja』、全編に渡って事ある度にマサ&ブルースカイのごきげんなナンバーがお聴きいただけます。勿論このカーニバルのシーンでも。印象に残るのは冒頭、ラジオでリクエストされるくだりの曲。
“リバー うぉうお リバー”
みたいな歌詞なんですが、マサの発音は
“リバファ ふぉうふぉ リバファ”
と、終始こんな感じ。その地に足の着いていない桑名正博テイストは我々の不快指数をびんびん刺激してくださいます。

後日、ヤミ金業者の元には古賀先生の暗躍もあって業務停止命令の書類が送られてきます。凡百の演出家ならここは主人公に手柄を譲ってやりたくなるところですが、そこは奇才大仁田監督、一筋縄ではいきません。ここまで荒唐無稽なエピソードを連発しておきながら、妙に生々しいリアリズムを無作為に、唐突に放り込んでくるあたりが斬新ですよね。
最終的には政治家の鶴の一声という、エネルギッシュな公権力の偉大さをフィルムに焼き付けてくれました。
ブラボー!

さて、これでヤミ金問題は解決しました。お次はマサのロック界への返り咲きについて。まず結論から先に言うと、観た私も判然としません。

ですから順を追ってご説明していきましょう。マサは昔世話になった(同様に迷惑をかけた)ライブハウスのマスターの計らいで、かつてのバンドメンバーと再会し、マサ&ブルースカイを再結成。あんなにマサと険悪だったマスターは「俺もマサ&ブルースカイのファンだったんだ」みたいな眠たいことを言い出し、「よかったら映画の主題歌やってみないか?」といきなり大きな仕事を紹介してくれます。

マサは勿論それを快諾、新曲でオーディションに臨むのだとか。スタジオでの練習後、花子と一緒に帰り道の川沿いを歩いていると、人相の悪いチンピラ風(と言うよりパチスロ屋の沖スロコーナーとかに居そうなタイプ)が意図的にぶつかってきます。当然のことながら怪訝な表情を浮かべるマサ。

この辺りと前後して、必然性を著しく欠いたシーンが挿入されるのですが、それはマサと花子が抱き合い、二人の周囲をカメラがくるくる廻るというもの。「キャハハハハ」なんて声が聞こえてきそうです。しかもそれはマサの妄想というおまけ付き。

コントじみたオーディションにも合格し、瞬く間に順風満帆な境遇を手に入れたマサやん。¥3,000募金の日々が嘘のようです。誰も望んでいない新曲を披露し悦に浸るマサ、今日は一人でご帰宅です。
そんなマサに忍び寄る魔の手。そう、例のチンピラです。
先程のシーンは伏線だったわけですね。チンピラ側の入念な事前演習だったのでしょう。と、わざわざ好意的に解釈していますが、この演出にも首を捻らざるを得ない。映画も終盤にきて“伏線”というテクニカルな手法を繰り出した大仁田監督ですが、僭越ながらこれには一言申し上げたい。
完全に使うポイントを誤っている、と。
本来使うべきところ(古賀先生のくだりや、チンピラは誰の差金なのかという説明描写)で使わず、いきなりチンピラの予行演習を組み込んだ大仁田監督の演出手法には、新しい時代の息吹を感じずにはいられません。

それでも尚、無理矢理擁護すれば、最初の決行時はマサは花子と一緒だったので、後日一人の時を狙ったとも言えるのですが、それならそもそも接触するなよ、という話に落ち着いてしまいます。

で、結局マサは死にます。
チンピラに刺されて。

えええええええええっっっっっ!!??
と思いますでしょ?
私もひっくり返りました。
適当にこのままお茶を濁して終わるのかな、と高を括ってましたから。

こんなところでもありもしない“作家性”を前面に押し出す大仁田監督。私にもう少し腕力があれば、折檻していたところです。
ただ本当にマサが死んだのかどうかは不明で、曖昧な描写しかされません。

ラストシーンはこんな感じです。
花子が手にする映画のポスターにマサ&ブルースカイのクレジット、そこからパンアップして空へ飛び立つ飛行機。そこへ再びラジオDJの声、リクエストナンバーは勿論“リバファ うぉうふぉ リバファ”。そして驚きのラストカットは、花子がマサに贈った小熊の人形がちょこんと乗ったギターケースを、まるで山口百恵のように路上に置いて立ち去っていく誰とも知れぬ人物(膝下までのショット)。

いかがでしょう。
この筆舌にし難い虚脱感、行き場のない怒り、最後まで律儀に観続けた自分への賛美。思いは様々ですが、なによりもまず、タイトルにまで冠したMonja=もんじゃ焼きが一体何のメタファーであったのか、最後まで意味が判らないという絶望たるや……。

万人にはおすすめ出来ませんが、酷く落ち込んでいる時なんかはいいかもしれませんよ。こんな自分でも生きてていんだと思わせてくれますから。保証はしませんが。
| 映画 マ行 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by helmetbros -
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