愛の巴投げ無節操で無責任な映画レビュー

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楽日 17:19
2003年
監督/脚本:ツァイ・ミンリャン
出演:チェン・シアンチー、リー・カンシェン、三田村恭伸、ミャオ・ティエン、シー・チュン、ヤン・クイメイ、チェン・チャオロン

眼前に横たわる現実、すなわち老舗映画館の閉館という現実が先にあり、それを追走するかたちでつくられた作品である、という予備知識はあるにはあった。が、さしてセンチメンタルな気分にさせられるでもなく、いかにもツァイ・ミンリャンらしいテンポで綴られていくそれは、90分という時間が果たして必要だったのだろうか。仮に30分であったとしても、彼ほどの力量を持つ監督であるなら、より鋭利さを増したものをつくれたような気がしてならない。通俗性を拒否しながら、世界基準としての商業映画の尺に縛られているのは、ある種ダブル・スタンダードな態度とは言えないだろうか。それすらも破壊する気概を見せてほしかった。
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ラストデイズ 17:41
評価:
Amazonおすすめ度:
不安だろ?
オルタナティブな作品
自殺
2005年
監督/脚本:ガス・ヴァン・サント
出演:マイケル・ピット、ルーカス・ハース、アーシア・アルジェント、スコット・グリーン、ニコール・ヴィキューズ、リッキー・ジェイ、ハーモニー・コリン、キム・ゴードン

仮に『グッド・ウィル・ハンティング』や『小説家を見つけたら』が映画監督ガス・ヴァン・サントを構築する上での伏線だったとするなら、そのしたたかさには舌を巻きますが、どうにもこの『エレファント』路線には共鳴できないわけです。意図的にハリウッドの映画文法を放棄、あるいは排除していることは明白ながら、果たしてそれがいわゆるアート系作品群の持つ、良くも悪くも独善的な強度を勝ち得ているのかと言えば、私には疑問符が浮かぶ。

ただ、その掴み所のないフィルモグラフィーも持つガス・ヴァン・サントという映画監督に興味を惹かれるのは紛れもない事実なわけで、それは立派に彼の魅力となり得ている、とも思う。ドンピシャ世代ながらニルヴァーナに強い思い入れのない私は、この様な作品を捧げられてカートがどのような表情を見せるのか想像もつかない。相好を崩すのか、あるいは苦笑するだけなのか。

中学時代、熱狂的ニルヴァ−ナファンの深見(仮名)という親友がいた。三年の秋頃だったろうか、音楽教室で彼がポロポロと奏でるクラシックギターの音を聴きながら、私はボーッとしていた。気付くとギターの音はいつしか止んでいた。彼は同級生の江口(仮名)とニルヴァーナについてなにやら話し込んでいたのだ。江口はからかわれやすい体質の持ち主で、その癖、気が強いという変わり者であった。特に興味のなかった私は少し離れた場所から二人の姿を眺めていた。しかしはっきりと二人の間に薄暗い陰が広がっていくのを肌で感じた。きっと江口の知ったかぶりが深見のニルヴァ−ナ愛を刺激したに違いない。温厚な深見は私にも見せたことのない鬼気迫る形相をしていた。これは危ない、私が咄嗟にそう思うよりも早く、深見は手にしていたギターのネックで江口の額をぶん殴った。我が目を疑いながら、あの優しい深見をして狂わせるニルヴァーナというバンドの偉大さを知ったのだった。幸い江口の怪我は軽傷に済んだ。
もう秋ですね。
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るにん 01:31
2006年
監督:奥田瑛二
脚本:成島出
出演:松坂慶子、西島千博、小沢まゆ、麻里也、ひかる、島田雅彦、玄海竜二、金山一彦、なすび、濱本康輔、大久保鷹、片岡長次郎、根津甚八、奥田瑛二

150分というのが冗長に感じられて非常に惜しい作品かと思います。監督の奥田さんも出演されているわけですが、彼絡みのエピソードが本筋とあまり関係なく、まるきり削ってもよかったんじゃないでしょうか。サイドストーリー的なもの、つまり子を身篭った女と元花魁の少女のエピソードに時間が割かれており、その分だけ松坂さん演じる豊菊と恋仲になる喜三郎(西島千博)の描写がおろそかになってしまっていて、いまひとつ彼の人となりが見えてこない。

となると、彼の恋と孤島からの脱出が物語の機軸となっている本作においては致命的な欠陥となってしまっているわけです。せっかく“脱出”という娯楽要素の塊のような、大きな山場が用意されているわけですから、それに至る用意周到で緻密な計画らしきものがあれば、また違った楽しみ方が出来たのかもしれません。以上は脚本の問題としても、ラストの大立ち回りがまたよろしくない。それまで比較的淡々と静謐に演出されてきたにも関わらず、ここではスローモーションを用いて非常に粘っこく、しかしあまり効果的でないベタさが空回りしており、興醒めさせる。

監督の本気度が伝わってきただけに残念に思いました。海外ではイーストウッドは言うに及ばず、ショーン・ペンやメル・ギブソン、かつてはデニス・ホッパーなど、監督業に乗り出した俳優さんはいずれも面白い作品を撮っておられるわけで、昨年モントリオールでグランプリを受賞したのは記憶に新しいところですが、是非とも今後のご活躍に期待したいものです。
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レミーのおいしいレストラン 00:37
評価:
Amazonおすすめ度:
大人が楽しめます
2007年
監督:ブラッド・バード
脚本:ブラッド・バード
原案:ブラッド・バード、ジャン・ピンカヤ
声優:パットン・オスワルト、ルー・ロマーノ、ブライアン・デネヒー、ブラッド・ギャレット、ジャニーヌ・ギャロファロ、イアン・ホルム

しかしピクサーってのはホントにすごい会社ですよね。老若男女が楽しめる上質なエンタテインメントを作り続けるその一貫したスタンスには毎度感銘を受けます。無論、そこには計り知れない努力と予算が費やされているのでしょうが。本作もまたその例に漏れず、CGアニメのクオリティーは一級品。いかにも漫画的なキャラ設定や展開運びもこれだけ丁寧に作りこまれていれば文句はありません。むしろ天晴れ。物語は天才的な料理センスを持つネズミの平野レミーが、ボスボロットみたいに無能な若者リングイニ君にパイルダー・オンして大活躍するというもの。

余談ですが、けっこう混雑していた劇場内、私の隣に座った森三中大島似のレディと男性のカップルが上映開始後間もなく、トウモロコシの爆ぜた香ばしいヤツを親の仇のようにむさぼり喰い、ストローをズズズいわせて正体不明の汁をすすり、ばかりか携帯を落とすわ鍵を落とすわ終始落ち着かない。まあ、劇場側が販売してけつかるんだからしゃーないわけですが、ガラ空き時はまだしも、混雑時くらいはもう少し隣近所に配慮してくれてもいいんじゃないかと感じた次第。作品が作品だからチビッコだって多いんだし。劇場によってはピザとかチリドッグとか販売してるところもありますでしょう。あれはホント勘弁してくれませんかね。密室だと凄まじい匂いですから。

閑話休題
そんなわけで序盤はあまり没頭できなかったわけですが、それでも徐々に物語に誘いこまれ、クライマックスのネズミ総動員大作戦では心も踊り、そこだけでも何度も観たいと感じられ十分に満足。ただ一点、どころか二点、三点気になった箇所があったのも事実で、例えば駄目見習いのリングイニ君が終盤、内海君顔負けの巧みなローラースケートで唯一とも言える見せ場をつくるわけですが、あの唐突感はいかがなものかと。何の取り柄も無いかに思えた彼の意外な才能なわけですから、軽く伏線を配置する余裕が何故なかったのでしょうか。レミーが最終的に選択する料理ラタトゥイユにしても、酔ったリングイニが他愛もなく口走っただけで(しかもそれをレミーは聞いていないはず)、いまひとつ説得力に欠ける。これに関してもレミー自身のこだわりを明確にする描写が事前に欲しかった。
と、欲を言えばきりがありませんが、ピクサーへの期待も込めて。



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ライフ・アクアティック 18:06
2005年製作
監督・ウェス・アンダーソン
脚本・ウェス・アンダーソン 、ノア・バームバック
出演・ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット

おそらく全く意識していないと思いますが、船内の断面舞台での段取り芝居なんかを観ていると益々グリーウェイを想起させますね。また、「んなわきゃねぇだろ!」と内心感じながらも、どうしてあんなに銃撃戦シーンが素敵なのでしょうか。

本作はアメリカのみならず、全世界を見渡しても異彩を放っていることに疑いの余地はありません。特にパッケージにもある潜水艦で深海を進むシーンの異様さがそれを端的に証明しています。意図的なB級テイストは高度なストップモーション・アニメの技術等に支えられ、本作のユニークさとして見事に昇華されている。

どいつもこいつも皆一様にすっとぼけたキャラクターながら、私が苦手とする三木聡氏のような匙加減知らずには陥っておらず、良い塩梅に落ち着いています。物語の骨子だけを抽出してみると、前作『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』との共通点もいくつか散見されます。不甲斐ない父親(ビル・マーレイ)、息子(オーウェン・ウィルソン)との確執、妻(アンジェリカ・ヒューストン)との関係、妻の元夫(ジェフ・ゴールドブラム)やウィレム・デフォーをはじめとする乗組員たちもある意味家族と言えなくもない。すなわち家族の物語であることは明白なわけです。

しかしながら、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』がニューヨークのとある街角が舞台であったのに対し、本作は海洋探検家が主人公ということもあって大海原が舞台となっています。ですから物語もそれ相応に膨らみ、エンタテインメントとしての幅を有している。船の下腹部先端にある無意味な小スペースなんてジョン・カーペンターの『ダークスター』を思い出しました。

二度、三度の鑑賞に堪えうるという意味でもまたグリーナウェイを感じさせます。しかし定価¥1350ですか、手元に置いておいても損のない一本だと思いますよ。



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ラブ★コン 22:58
評価:
Amazonおすすめ度:
ただの青春恋愛ドラマ
大人が感動できる、優れた恋愛映画。
関西人の為の関西人による作品。
原作コミックは未読。
小池徹平くんのファンであれば楽しめるでしょうね。
あるいは女子中学生、高校生あたりがターゲットの作品でしょう。
私はと言えば冒頭から押し寄せる上滑りのギャグ連打に辟易し、ほとんど早送りしながら観たのですが、谷原章介さんのハッスルぶりに唯一クスリとさせられました。しかし谷原さんというのはどの作品でも大抵王子様キャラですね。

女子の願望を満たしてくれる作品と言えば、テレビ版『花より男子』のスマッシュヒットが記憶に新しいですが、どちらもこの歳になると付き合うのがしんどいというのが正直なところ。
妙に造りやノリがテレビなのも脚本が鈴木おさむ氏だと知れば納得でしょうか。
おっさんは口直しに松岡錠司監督の『バタアシ金魚』でも観直したいと思います。
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リトルショップ・オブ・ホラーズ 22:36
評価:
Amazonおすすめ度:
(ビルマーレイファン向けのレビューです)
人はこのなんの野心もない(ように映る)純朴な作品をどのように評価するのでしょうか。
製作されたのは1986年、監督は『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』などで知られるフランク・オズ。私は過剰なまでにB級映画を持ち上げる向きを決して信用してはいませんが、やはりこうした良作は時折陽に当ててやるべきでしょうね。

本作は“B級映画の帝王”の異名を持つロージャー・コーマンの作品を下敷きにしたミュージカル舞台劇の映画化、という少々複雑な経緯を辿っているのですが、そんなことはどうでもいいと思わせるほど出来のいい仕上がりとなっています。ジャンル分けするのも難しく、SF、ホラー、コメディ、ラブロマンス、ミュージカル、とほとんど全ての娯楽要素が詰め込まれたハイブリッドな一本。

スティーブ・マーティンとビル・マーレイの掛け合いなど見所は多いのですが、ともかく三人組の黒人女性が狂言廻しのようにして現れるミュージカルシーンが群を抜いて素晴らしい。個人的には冒頭近くのスラム街の面々が歌い踊る様に感激しました。

フェンスの手前からぬっと現れる群衆の手、俯き加減にふらふらと街中を徘徊する緩慢な蠢き、それらはまさしくジョージ・A・ロメロの描くゾンビように禍々しい。特別なメイクを施しているわけでもないのに、あの一種独特な不気味さをミュージカルと絡めながら演出してしまう手腕は流石の一言です。

そして本作のMVPとも言えるオードリーIIの見事な演技(?)は特筆に値します。質感はチープながらも作品の世界観と調和しており、触手が暴走するくだりは失礼ながら意外に圧巻。

要するに悪魔に魂を売り、その代償として富と名声を手にする男の話なのですが、シーモア(リック・モラニス)はほとんど能動的に悪事に手を染めることはありません。彼の犯した唯一の大罪は死体損壊及び遺棄でしょうか。ですから手放しのハッピーエンドはどうかなぁと心配していたのですが、ラストの“ニヤリ”に救われましたね。あの“ニヤリ”は『ゴースト・オブ・マーズ』のアイス・キューブのウィンクにも似た素敵な“ニヤリ”です。

同じくフランク・オズ監督の『ビッグ・ムービー』も悪くはなかったのですが、やはり無茶苦茶をやった代償を背負わせて欲しいと願うのが人情です。共に愛すべき馬鹿が主人公ではありますが、代償を払う可能性に含みを持たせている分、私は本作を支持したいと思います。

私はジョン・ウォーターズ監督の『クライ・ベイビー』が大好きなのですが、本作もそれに匹敵するほどの魅力が満載です。
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楽園の女 22:34
日本未公開でビデオスルーされた本作。
発表されたのは2001年、監督は『息子の告発』や富田靖子さんが出演されていた『キッチン』などで知られるイム・ホー。主演はなんとウィレム・デフォーとルオ・イェンという中国人女優さん。しかもこのルオ・イェンさんが脚本と製作も兼ねるという八面六臂のご活躍なんですね。
ストーリー
1938年、日中戦争が激しさを増していた中国。その日は、国内でも指折りの名家に嫁いだウー夫人の40回目の誕生日。ところがこのおめでたい日に、ウー夫人はある重大な決断をする。彼女は、すっかり冷え切り、封建的な関係だけが存在した夫婦関係に見切りをつけ、18歳になったばかりの若い娘を夫の第二夫人として用意すると、自分は夫の束縛から自由になることを選ぶのだった。やがて、ウー夫人は息子の英語教師として雇ったアメリカ人宣教師アンドレの優しさに触れ、いつしか恋に落ちるのだったが…。
(allcinema onlineより)

なんでしょう……、二夜連続おばさまのロマンスを観せられると(って自分でセレクトしているんですが)、もう勘弁してくれと言いたくなります。私はDVDやビデオで映画を観る際、冒頭30分程度で作品の善し悪しを判断し、律儀にその先も付き合うべきかどうかを考えます。そこで“否”との脳内指令が下されたなら、直ちに作品は早送り乃至スキップの刑に処されます。
だって、時間が勿体ないですからね。

この作品は無論、“否”。
原作はパール・バックの小説なんですが、どの程度改ざんされているのでしょうか。まず、人物造形の掘り下げ方が実に甘い。紋切り型とも呼べない代物なんですね。夫は常に横暴で威丈高で、夫人は常に被害者(観る側にはそう映らなくても製作サイドはそのつもりという意味で)、アメリカ人家庭教師はそんな夫人のよき理解者です。

しかしながら、自立心ばかり強く一人では何も出来ない分不相応で身勝手なこのウー夫人に、一体だれが感情移入できるのでしょうか。問題は感情移入出来る出来ないの話ではなく、制作者サイドがその点に無自覚である、という脇の甘さにあります。仮に主人公が極悪非道な殺人者であってもそれは変わらない。

まして物語としては王道とも言えるラブロマンスの類です。プライドばかり高く言行不一致な40過ぎのおばさまの恋を扱うのだとしたら、せめてお灸をすえる展開を、と期待したのですがそれも叶わず……。

決定的なのが日中戦争という、後付けのような設定がまるで意味を成さないこと。物語を悲劇に誘導したいだけの装置でしかないんですね。こんな映画で日本が悪者にされたんじゃたまりません。ここで日本軍は顔のない恐怖の対象という扱いなんです。

それだけなら百歩譲ったかもしれませんが、明らかな非戦闘区域である本作の舞台で日本軍は蛮行の限りを尽くすのです。強姦、強奪は言うに及ばず無差別殺人と形容してもいいほどの非道っぷり。

アイリス・チャンの『レイプ・オブ・南京』が映画化されるのかされたのかよく知りませんけど、悲劇の道具として日本軍を扱っている本作のほうが、無邪気である点において悪質かもしれません。

“楽園”というのはルオ・イェンさんの頭の中の話でしょうか。
ウィレム・デフォーということで後半の裏切りに期待したのですが、そんなわけありませんでしたね。イム・ホー監督も変なおばさまに絡まれちゃったなぁという感じで、『プラトーン』ごっこに走ったのかもしれません。
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リトル・ランナー 22:11
評価:
Amazonおすすめ度:
ミラクルと信仰
心温まる作品で拾い物
おお!
難病モノとスポ根モノの合わせ技ですね。大抵の人なら観る前から警戒心が働くことでしょう。私もその一人ですが、そのあたりの心理をマイケル・マッゴーワン監督はよく心得ています。少なくとも、無為無策のお涙頂戴劇にはなっていません。

物語冒頭、主人公の少年ラルフが懺悔をする場面から始まるのですが、ここでたっぷりとユーモアを交えながら、少年のキャラクターが純朴なだけの優等生でないことが示されます。このキャラクターが陰鬱となってしまいそうな物語に救いを与えていて、一抹の懸念が杞憂であったことに幾分胸を撫で下ろしました。

つまり現実的な思春期の14歳、頭の中は下ネタでいっぱいなんですね。具体的に言うと芝刈り機の振動で股間を刺激され、ラルフ少年はうっとりとしてしまったことを告白するわけです。まことに馬鹿馬鹿しくて素晴らしい。

しかも告白していたのは神父様ではなく、悪戯好きの同級生だったというオチ。若干いじめられているようにも見えるのですが、ラルフ本人はもやしっ子ながら勝ち気な性格なので、あまり気にしている気配はありません。どちらかと言うと素行不良で煙草なんかも嗜む悪ガキなんですね。

そんなラルフではありますが、母親の見舞いだけは欠かさない。この親子二人が堅い絆で結ばれている様子が描かれます。この愛情表現も必要以上にベタベタしておらず、ラルフは顔見知りの看護婦さんに軽口を叩いたり、学校でも好きな女の子をデートに誘ったりして、学校と病院の往復生活をそこそこエンジョイしているようにも映る。

結論から先に言うと、後半のマラソン大会への参加に目新しさは感じられないのですが(淡白ながら、しかし決して悪くはない)、そこに辿り着くまでの描写、もっと正確に言えばボストンマラソンで優勝しようと決意するまでの展開が秀逸だと思いました。

どう考えたってマラソン大会で優勝することと昏睡状態の母親の快復は結びつかないわけですが、その糊しろとなっているのがキリスト教の存在なんですね。ラルフ少年が5、6歳の幼児ならまだしも、14歳でその不可解な思考に溺れていくことには説得力が足りませんから、その為に舞台装置がカソリックスクールであったと言っても過言ではない。

但し、それは私のようにキリスト教に明るくない日本人の視点ですから、一概には断言できないのかもしれませんが。本作にはチャプタ毎におそらくキリスト教の格言じみた文言が差し挟まれるのですが、その意味も私にはよく判りませんでした。

ともかく、印象的なプールでの事件をはじめ、前半にやや片寄っている下ネタ満載のギャグは、男子諸君には好意的に受け入れられるのではないでしょうか。個人的にはデートの誘いにガールフレンドの家をラルフが訪れた際、歳下の兄弟が5人も6人も現れるシーンが笑えましたね。
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