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評価:
Amazonおすすめ度:
確信にたどりつく旅
旅そのものの中で☆
ロードムービーはいいですね
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“勝手にガエル・ガルシア・ベルナル祭”もとりあえず今回で一区切り。
トリを飾るのは2004年に公開されたロバート・レッドフォード製作総指揮、ウォルター・サレス監督作品、『モーターサイクル・ダイアリーズ』です。言うまでもなく、本作はいつの頃からかファッションの記号にされてしまったキューバのゲリラ指導者、チェ・ゲバラの若き日を描いたロードムービーですね。エルネスト(=ゲバラ)をガエル・ガルシア・ベルナルが、彼と共に旅をする歳上の友人アルベルト・グラナードをロドリゴ・デ・ラ・セルナがそれぞれ演じています。
私はロードムービーというだけで若干評価が甘くなってしまうのですが、本作に登場するロケーションは実に雄大で、それはアメリカ映画でしばしば見受けられる荒涼とした感じとはまた違い、どこか物悲しい印象を与えます。アッバス・キアロスタミ監督の描くイランの山々をどこか彷彿させる、第三世界特有の沈鬱さとでも言いましょうか、諦めにも似た停滞感とそこで逞しく生きる人々の姿が無条件に胸を打つんですね。
時代設定は1950年代ですが、ここに登場する例えばペルーの山奥で暮らす人々なんて今現在もそれほど大差ない暮らしをしているんじゃないかと勝手に想像してしまいます。マチュピチュ遺跡なんてホントに奇跡です。目を疑いますね。まさしく神秘の世界。死ぬまでに一度は訪れてみたいものだと感じました。ペルーと言えば原田眞人監督の『KAMIKAZE TAXI』の主人公、寒竹一将(役所広司さん)を思い出しますが、まあそれはどうでもいいです。
一応史実に基づいた作りになっているのでしょうが、それも一先ず横に置いておいて、ロードムービーでありながら特別な動機も目的もないというのがまた素晴らしい。旅そのものが目的なんですね。恋人に会いにいくわけでも、病気のおばあちゃんに会いにいくわけでも、まして大きな麻薬の取引が待っているわけでもない。
個人的にはエルネストのあまりの正義漢っぷりに少々非現実的なものを感じて、どちらかと言うと人間くさいアルベルトに共感しながら観ていたのですが、どうやらゲバラ自身ホントに潔癖な性格の人だったらしいので、そこはある程度差し引いて考えるべきなのかもしれません。
ところで、世襲制はともかく同じ社会主義国家でも北朝鮮とキューバに対するイメージがあまりにも違うのは私だけでしょうか。それはおそらく『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のような作品に洗脳されているのかもしれませんが、凄惨な北朝鮮市民の現状に比べ、キューバにはどこか牧歌的な印象があるのです。無論、言論の封殺や情報統制などが存在する事実も知ってはいるのですが、現実と乖離しながらも理想を追い続けるドン・キホーテ的な部分にどこか惹かれるものがあるのかもしれませんね。とは言え、より詳細な情報が噴出した時、そんな甘い幻想も吹き飛んでしまうのかもしれませんが。