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評価:
Amazonおすすめ度:
素朴なのか、残虐なのか、それともこれが自然なのか。
貴重な親日国も大切に
主役は自然。
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2003年
監督:キム・ギドク
脚本:キム・ギドク
出演:オ・ヨンス、キム・ギドク、キム・ヨンミン、ソ・ジェギョン、ハ・ヨジン、パク・チア、キム・ジョンホ、キム・ジョンヨン
時系列は前後しますが舞台装置の似ている『弓』よりは良かったかな、と。しかしやっぱり愚直なまでにストレートなんですね、この方は。そこは奇を衒わないという部分を評価すべきなんでしょうか。ロケーションは確かに絶景で、この景色を眺めているだけも心が洗われます。
ただ、やはりどこか大味と言いますか、大事な部分がすっぽ抜けている気がしてならない。なるほど一人の男の人生と四季折々をオーバーラップさせて静謐に描写されていく様はそれなりに説得力を有している。けれども、設定上同一である筈の主人公を、少年時代はまだしも、3度にもわたって完全なる“別人”が演じ分けるというのはいかがなものでしょうか。元パチンコ必勝ガイド編集長、大崎一万発氏のような青年が俗世にまみれると、いかにも韓流といった風貌のハードボイルドに一変してしまう。同一人物であると観客が悟ることは容易ではあるのですが、成人男性の顔(顔つきという意味ではなく)が変わるということは、大袈裟に言えばそれまでの蓄積を崩壊することにも繋がっていかないだろうか、と。そしてそれは物語そのものの断絶をも意味し、100分程度で人間の業を描く本作においては由々しき問題なのではあるまいか。
言葉を排除して丁寧に物語を紡いできたのに、「あ、そこはアバウトなんだ」という驚きを禁じえませんでした。ギドク監督自身が演じる壮年期の男の登場では「誰?」という疑問が体に石を結びつけるまで氷解せず、突然カンフーに開眼するエピソードに至っては、跳び蹴りをしてストップモーションという無防備なセンスに愕然とした次第。
それ以外にも冒頭“春”のエピソードで少年が無益な殺生を繰り返すわけですが、ここが端的に本作のもたつきをあらわしています。つまり「生き物と石を紐で結ぶ」→「それを放ちもがき苦しむ様を見て笑う少年」、という描写が3度繰り返されるわけですが、2度目と3度目の「生き物と石を紐で結ぶ」描写は割愛できる筈なんです。にも関わらずギドク監督はそれをやる。「何を描くか」というビジョンは明確だと思うのですが、「何を削るか」という部分がおろそかに感じるんですね。
舞台が舞台ですから仏教、宗教が教示する道徳観、あるいは人生観に着地せざるをえないのは仕方が無いにせよ、欧米人が喜びそうな露骨なオリエンタル趣味の羅列は河瀬直美監督、あるいは辻仁成氏のようなあざとさを感じてしまい、まだ『サマリア』の方が可愛げがあったような。しかし結局、俗世と隔絶した神聖なる庵が結果的に「ろくでなし養成所」との印象に落ち着くのは宗教そのものの形骸化を告発しているのか、いないのか。