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評価:
Amazonおすすめ度:
僕にもあったこんな思い、永井正子さんは自然な存在感
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監督を務めるのはピンク四天王(ってまだ言うんですか?)の一人、サトウトシキさん。主演は永井正子さんと戸田昌宏さんのお二人です。勿論、本作も夫婦愛がテーマとなっています。子宝に恵まれない一組の夫婦が何故かアブノーマルな性行為に傾倒していくという、なんとも不可解なお話。一応、脚本監修として荒井晴彦さんのお名前がクレジットされているのですが、ホントに監修したんですかねぇ?ただの名義貸しではないのかと、早くも二本目にして疑わしく思えてきました。
フィルムではなくビデオで撮影されているものだから、映像に陰影がなくのっぺりとしていて、まるで学生映画でも観ているようなチープさでした。それもPFFあたりに応募したら即刻切り捨てられるレベルですよ、これは。『煙が目にしみる』のエフェクト具合は少々やり過ぎかな、とも感じたのですが、ビデオ作品はあのぐらいで丁度いいのかもしれません。そう言えば、テレ朝の松本清張シリーズでも同じような印象を抱きましたね。あれもこってりと映像が加工されていました。
映像はともかく、物語の内容もいまひとつパッとしません。シリアスを気取ってはいるのですが、それがハマっていないものだからどうしても滑稽にしか映らないんですね。その要因として筆頭に挙げたいのが、夫が妻を陵辱する行為に目覚めるに至る動機の不十分さ、あるいはその見せ方に問題があるのだと思われます。
ここから物語の核心に触れていくので、未見の方はご注意ください。
ちなみに、原作は未読なのであくまでも映画『愛妻日記』で感じた問題点であることを強調しておきます。本作のキーポイントは夫が自発的に妻を陵辱し始めたつもりであったが、実は全て妻の間接的な誘導であった、というある種のトリックだと感じました。しかしそれがあまりにも露骨過ぎて興醒めする一方なんですね。
そこに重点を置いていないと言うのであれば、例えば押し入れの奥から手錠だのなんだのといったアイテムを偶然発見してしまった夫が妻を問いつめる、そこで妻が過去の経緯を告白する、その程度で十分だったのではないでしょうか。本作のテーマは夫婦の倒錯した性愛なわけですから、そこへ気を利かせたつもりの稚拙な小細工は鼻白むだけでしかありません。
この段階で躓いてしまうと、シリアスであればあるほど空転していき、不本意な滑稽さを孕んでいってしまう。しかしながらこれは本作に限った問題ではなく、ピンク映画の普遍的な課題と言えるのかもしれません。
昨日の記事、『リトル・ランナー』の主人公は14歳ですから、彼が性衝動に突き動かされて馬鹿げた行動に走るのはまだ微笑ましくもあるのですが、いい大人、それも平凡で面白みのない男であると繰り返し本人が述べる人物設定では首をひねる他ない。
『煙が目にしみる』が成功していたとすれば、妻の性格が幾分エキセントリックに設定されていたことにあるでしょう。それに引きずられるカタチで夫もアブノーマルな性に目覚めていったわけですから。しかしそれも多用すれば芸がない。
主演のお二人がそれこそ体を張って熱演していただけに残念に思いました。
とは言え、公園でのラストシーンは哀しくも前向きな夫婦の愛にぐっときます。